第三十七話「ランスターご一行」


 ブレイヴァニスタを北西に約三百キロ、アストリア公国の北方に位置する魔法国家ハールーンの国境手前にソルトシュワという町がある。

 土地が豊かなため農業が盛んであり、特にそれを原料とした多種多様な酒類はソルトシュワ・ブランドと呼ばれ、

 全世界の愛好家達から高い評価を受け、数百年の昔から飲まれ続けている。

 ハールーンへ向かう冒険者達の宿場町としても機能しているので、ソルトシュワに来て酒を口にしない者はほとんどいない。

 そのためソルトシュワは、他の町よりも酒場の数が多く、規模も大きいのである。



「ホットミルク一つ! ジョッキでっ!」

「……私も同じものを……カップで」



 その内の一つに、イリスとククルーはいた。

 まだ日も高いため飲みに来ている者は少ない。

 しかし、そうでなくとも二人のような少女が酒場にいるのは少々不自然だった。

 明らかに周囲から浮いている二人の元へ、カウンター越しにバーテンが一人近づいていく。



「嬢ちゃんたち、こんなとこに何の用だァ? ここは嬢ちゃんたちみたいのが来るようなとこじゃないぜェ」



 注文されたミルクを二人の目の前に置きつつ、バーテンは訛りのある口調で言った。

 イリスはえへんと貧相な胸を精一杯張る。



「おじさん。こう見えても私達冒険者なんだよっ」

「おじさんじゃねェ、おにいさんだ。……ってェ、そいつァマジか」



 頷いてから、イリスがジョッキに手を伸ばす。

 ぐいっ ドン!



「冒険者が情報を集めるなら、まず酒場に行け! って教科書に書いてあった……んだよねクーちゃん?」

「……」



 くぴくぴと無言でミルクを飲んでいたククルーが頷く。



「教科書……もしかすると嬢ちゃんたちアレか、クエスターズの卒業生か」

「? そうだけど、どうしてわかったの?」

「いや、何を隠そう俺も昔クエスターズに通ってたからよォ」



 バーテンは懐かしそうな笑みを浮かべた。



「そうだったんですか! きぐーですねっ」

「オゥ。んで後輩ども、何の情報が欲しいんだァ? ここに来たってこたァ、何か聞きたいことがあるんだろ?」

「あ、はい。そうなんですっ」



 持ち上げかけたジョッキを下ろす。



「私たち、国境を越えてハールーンに行こうとしてたんです。そうしたら、途中で関所があるじゃないですか」

「あ、待て。そっから先は言わんでもいいぜェ。つまりアレだろ、嬢ちゃんたち」



 フッとバーテンは笑って



「関税が払えなかったんだろ?」



 イリスとククルーが同時に頷く。

 バーテンは難しそうな顔をして腕を組む。



「確か五千イールだったか。んん、一介の冒険者がなかなか普段持ち歩ける金額じゃねえわなァ」

「そうなんです。それで、良かったら割のいい依頼とか紹介してもらえないかなと思って来てみたんです」

「割りのいい依頼かァ。ちと待ってな。一応調べてやる。でもあんま期待すんじゃねえぞ。

五千イールなんてそこそこ大口の依頼は滅多に回っちゃこねえんだ」



 バーテンはそう言うと、カウンターの下に置いてあった帳簿をパラパラをめくり始める。



「んー、やっぱ五千も出してくれる景気のいい依頼はねー……あン?」



 紙をめくる手がぴたりと止まる。

 どうしたのかと思い、二人はバーテンに目をやった。



「なァ嬢ちゃんたち、嬢ちゃんたちはアレだよな。関税が手に入らなくてもハールーンに行けさえすりゃいいんだろ?」

「そうですけど」



 ニヤとバーテンは笑みをこぼした。



「なら、あったぜ。上手くすりゃタダでハールーンまで行ける」

「本当ですかっ? やったねクーちゃん!」



 ククルーが頷く。

 イリスはカウンターに身を乗り出す勢いだ。



「それで、その依頼はどんな内容なんですかおじさんっ」

「おにいさんだ。まァ、教えてやらんこともないが、その前に」



 バーテンはすっと手を差し出した。

 イリスは目をぱちぱちさせて、バーテンの顔と手を交互に見る。

 それに気づいたバーテンが口を開いて



「そうかァ、教科書にはこういうこたァ書いちゃいねえもんなァ。

いいか嬢ちゃんたち、巷じゃ水だってタダじゃねえ時代だぜ。

ってェわけで情報料二百イールのところ、先輩後輩のよしみでまけにまけて百イールでどうだァ?」



 イリスとククルーは顔を見合わせる。

 そして何も言わず百イールをカウンターへ置いた。



「毎度ありィ」



 バーテンは人の良さそうな笑顔だった。





     *





 バーテンが提供してくれた情報の内容はこうだった。

 近々ソルトシュワからハールーンに向かって発つ商人の一団がある。

 だが国境付近の山道には凶暴な魔物の他に、近頃は盗賊も出没するため、容易に通り抜けられるものではない。

 そこでその一団は、ハールーンまでの護衛についてくれる腕利きの戦士を募集しているのだとか。

 二人はその一団が滞在している宿に向かっているところだった。



「とりあえず行ってみないとわからないけど、雇ってもらえるかな?」

「……大丈夫。私たちは、そんなに弱くない」

「んぅー、でもまだエンジェちゃんには敵わないだろうしなー」



 イリスは歩きながら腕を組んであぅあぅと口を震わせる。

 この一月の間、二人は依頼をこなして路銀を稼ぎながら旅を続けていた。

 その中で、二人は自分たちの力が十分世間に通用することを知ったが、



(……思い上がらないのは、イリスのいいところかもしれない)



 半歩先を歩くイリスの横顔を見つめながら、ククルーはぼんやりとそう思った。

 酒場を出てから十分ほと歩いてから目的の宿は見つかった。

 建物を見上げ、イリスが声を上げる。



「おおおーっ、おっきいねっ!」



 木造ではなくレンガを積み重ねて立てられたそこは、宿というよりホテルと呼ぶべき趣だった。

 流石宿場町として栄えているだけあって、宿の造りは立派なものである。

 中に入ると、まず二人はフロントに声をかけた。



「すみません。護衛を募集している団体さんがあるって聞いて来たんですけど」

「ああ、はい。それならそこの通路を右に行ったところの一番奥の大きな部屋ですよ」



 ホテルのフロントは反射的に返事をしてから、まじまじと二人を見つめる。



「失礼ですが、あなた方は冒険者なのですか?」

「はいっ。私が剣士で、こっちが魔法使いですっ。見えませんか?」

「いえ……失礼しました。どうぞ奥へ進んでください。

あ、先ほどもあなた方と同じ件でいらした方々がまだお帰りになっていないので、

部屋に入る際にはきちんとノックをするようお願い申し上げます」

「わかりました。ありがとうございますっ。クーちゃん、いこっ」



 イリスとククルーはホテルの奥へと歩いていった。

 それを見送りながら、フロントが呟く。



「もしかして、あの子達が最近評判の剣士と魔法使いのコンビかしら?

確か小さな女の子だって話だったし。でも何か違った気がするわね……なんだったかしらね……」











「外から見ても大きかったけど、中に入るとより大きいねー」



 イリスはすっかりお上りさんで、目移りが激しい。

 二人は基本的に必要な分だけの旅費しか稼いでいないので、こんなに良い宿に泊まる機会はこの一月で一度もなかった。

 板を敷いただけに等しいベッドしかない安宿にしか泊まれないというのはざらで、野宿もかなりの回数経験した。

 何事も経験だと自身に言い聞かせて我慢してはいるが、実はククルーは野宿が嫌いだった。

 図太いイリスと違い繊細なククルーは、屋根のない場所で寝るとどうも気が休まらないのだ。

 最後にホテルと呼べるレベルの宿に泊まったのは、クエスターズの卒業旅行の時だったか。

 ……もう少し真面目にお金稼ごう、と密かに決意するククルーだった。



「一番奥……あ、あそこだねっ」



 イリスが突き当たりの扉を指差して言った。

 と、ちょうどその時扉が開き、中から一人の大男が出てきた。

 フロントが言っていた人たちの一人だろう。

 肩には巨大な斧を背負っており、引き締まった表情はいかにも歴戦の戦士といった風である。

 男はイリスたちに気がつくと、近くまで歩いてきて二人をジロと見下ろした。



「この先へ何の用だ。ホテルを出たいのなら今来た道を戻れ」

「えっと、違うんです。私たち、この先に用があるんです」



 男の視線に臆する様子がまるで無いのは、流石はイリスである。

 男は微かに目を細めた。



「……では、お前らも護衛の任に就こうというのか」



 まじまじと二人を見てから、不意に男は失笑した。



「まだ子供ではないか。そのなりで護衛とは片腹痛い」

「む、見かけだけで判断しないでくださいっ」

「イリス」



 反論したイリスをいさめるようにククルーが口を挟んだ。

 が、実は違う。

 ククルーは男に一瞬視線を投げかけてから、これみよがしに



「見かけだけで相手の実力を判断する程度の人に真面目に怒っても仕方ない」



 それを聞いて、男の顔から笑みが消える。



「娘、今のは聞き捨てならんぞ」

「……私は事実を述べただけ」



 ククルーは気後れするどころか、僅かに語調を強めてきっぱりと言い切る。

 これに一番驚いたのは、他ならぬイリスである。

 知っての通り、ククルーはあまり自身の感情を表に出すことがない。

 そのククルーが初対面の相手の神経を逆撫でするようなことを言っているのだ。

 彼女をよく知る人物なら、たとえイリスでなくとも驚きを隠せなかったに違いない。

 険悪なムードの中、奥の扉が再び開いた。



「明日の夜まで派手に遊ぶっスよー! ってあれオーランドの兄貴。

通路の真ん中でなに突っ立ってんスか? 兄貴みたいな図体のでかいのがいると通行の邪魔っスよ。

つーか今まさに俺が通れないっスよー。もしよければずざざーっと道を空けてもらえると嬉しいっス」



 出てきたのは、色白で線の細い茶髪の男。

 口調が軽いせいだろうか、なんとなく頭も軽いというか、ありていに言ってしまうとバカっぽく見える。

 大男が茶髪を見下ろし、不機嫌そうな声で



「うるさいぞユリウス。俺はこの子供と話をしてるんだ」

「兄貴ぃ、何があったのか知らねっスけど、もうちっと大人になりやしょうよ。あーちなみにどうしたんスか?」

「この子供がな」

「ふんふん」

「俺を侮辱する発言をだな」

「ブッ殺すぞクソガキィィィィ!」



 唐突に口調が変わる茶髪。

 その豹変振りに、イリスのツインテールがビビビと逆立った。

 茶髪は眉間にしわを寄せ、目をギラギラ光らせながら肩をいからせてククルーに歩み寄っていく。



「おうおう俺の尊敬する兄貴を侮辱するたぁどういう了見だガキィ。

ちっと可愛い顔してるからって調子に乗ってんじゃねぇぞ?」



 ククルーは何も言わず、そっと目を閉じるだけの返事をした。

 それは明らかに、話すだけ無駄だという意思表示。

 そんなことはお構いなしに食って掛かろうとする茶髪を、兄貴分であるらしい大男が止めに入る。



「おいユリウス。お前口調が昔に戻ってるぞ。落ち着け」

「兄貴が侮辱されたってのに落ち着いてられるわけねえだろ!

いくら兄貴の言うことでも聞けねぇぜ! このガキを反省させるまではなぁ!」



 血走った目で叫び続ける。

 完全に我を失っているようだ。

 大男は嘆息すると、ククルー達を見てすまなさそうな顔をした。

 一応、多少は礼儀をわきまえているらしい。



「なんだか騒々しいじゃないか。一体何をしてるんだい?」



 と、大男と茶髪が出てきた部屋からまた一人出てきた。

 紫色のマントが目に鮮やかな金髪の青年である。

 青年は長い前髪を指先で払いながら歩み寄ってきて



「あまり騒がしくしない方がいいんじゃないかな。隊長殿がお怒りだよ」

「わかっている。だがユリウスが……」

「またいつもの発作かい?」

「うむ」

「一旦眠らせるしかないかな」



 大男と青年は呆れたような目になって茶髪を見やる。

 茶髪は一層不機嫌そうな顔になって、今度は青年に食って掛かった。



「一番新米のくせにいい気になんなよグラン、んん? ちっと俺より強くて姉御に認められてるからってよお?」

「ふう、話すだけ無駄のようだね。いいから少し大人しくしてもらうよ」

「はっ! 出来るもんならやってみやがれよ」



 茶髪は懐から取り出したナイフを、青年は腰元の長剣を手に取る。

 二人は、ここがホテルの中だということも忘れて睨み合う。

 こんなところで戦ったりしたら迷惑極まりない。



「おらおらぶちかますぜグラン地べた這いつくばって泣いて謝らせてやぶへぇっ!?」



 大迷惑の幕が切って落とされる、まさにその瞬間。

 突如飛んできた何かに、茶髪が吹っ飛ばされた。

 茶髪は長い廊下を果てしなく転がっていき、突き当たりの壁にぶつかって静かになる。

 見ると、彼らが出てきた部屋の戸がいつの間にか開いており、そこに拳を突き出した状態で立っている人物がいた。

 髪は黒く、短い。

 スレンダーな体つきだが力強い雰囲気の女性である。



「何しようとしてんだよこのボケども。せめて外でやりやがれよ外で!」



 女性は姿勢を正すと、困惑した表情で立っている大男と青年に強い視線を向けた。

 その目には、何か有無を言わさない力があるように思われる。

 大男は無言のまま冷や汗を流し、青年は諦めたようにやれやれと肩をすくめてみせた。

 直後、女性は大きく溜息をついてイリス達を見、



「あ?」



 口をあんぐりと開き、固まった。

 それはイリス達も同様だった。

 まさかこんなところで会うとは思ってもみなかったのだ。



「よう、イリスにククルー。こんなとこで会うなんて奇遇じゃねぇか」



 カテリナ・ランスターはにかっと笑い、気さくに手を上げてみせた。











「いやマジすんませんしたっス! まさかお嬢ちゃん達が姉御のお知り合いだったなんて夢にも思わなんで!

つーわけで景気良くグイっとやってくださいっスここは奢りっスよ! もちろん姉御の!」

「ふざけんな。しかもガキに酒勧めてんじゃねえよ」



 イリスのグラスになみなみと酒を注ぐ茶髪の額にカテリナが裏拳を入れた。

 軽くとはいえ、百戦錬磨のカテリナの一撃は並ではなく、茶髪は椅子ごと派手にひっくり返る。

 注がれたものを捨てるのもはばかられ、イリスはグラスにちびちびと口をつける。

 とりあえずひたすら苦いという印象しか感じなかった。



「悪いなイリス。こいつこんなんだけど、もう悪い奴じゃねぇんだ。許してやってくれよ」

「気にしてませんっ。なんていうか楽しい人達ですねっ。流石カテリナさんのパーティメンバーですっ」

「……なんかそれ、オレがアクの強い奴をスカウトしてるみたいじゃねぇか。いや、事実そうなんだけどよ」



 カテリナは自嘲的に笑うと、グラスいっぱいのワインを一気にあおる。



「ちっ、酒が切れちまったか」

「隊長殿、それなら僕が代わりを持ってくるように言ってきますよ」

「おう、悪いなグラン。頼むぜ」



 ハハハと爽やかな笑みの残滓を残して、グランはその場から優雅に立ち去る。

 イリスはその背をじっと見つめてから、ほうと溜息をついた。

 彼のあの秀麗な身のこなし、あれは一朝一夕で身に付くものではない。

 動作の一つ一つが洗練されており、無駄が全く見て取ることが出来ない。

 きっとあの人も相当な実力者なんだろうなと思い、イリスは再び溜息をつく。



「イリス、グランのことが気になるのか?」



 そう尋ねるカテリナの顔には、妙な笑いが浮かんでいる。

 その笑みを、超鈍感なイリスは「カテリナさん上機嫌だなー」と思うだけで片付け



「うー。だってあれだけの人ですよ? 気にならないわけないですっ」

「はっはっは! そーかそーか! イリスもやっぱ女の子だったんだな!」

「……はいっ?」



 より上機嫌に笑うカテリナを不思議そうに見やるイリス。

 今の返答でどうして「女の子だった」なんて思われるのか、本気でわかっていない顔だ。



「あいつは俺のパーティじゃ新参だけどよ、オーランドとユリウスにゃ悪いが俺に一番実力は近いぜ」

「へえー。それで、どっちの方が強いんですっ?」

「……。バーカ!」



 カテリナはイリスの背中を思い切り叩いた。



「オレの方が強えに決まってんだろ? 伊達にリーダー張ってるわけじゃねえんだ」

「う、うう、だからって叩かなくてもいいじゃないですかー」

「無駄に丈夫な体してんだから、けちけちすんな」



 からからと笑いながら、カテリナは自分が見栄を張っていると自覚していた。

 グランとの実力差は、はっきり言ってほとんどない。

 確かにグランがはじめてメンバーに加入した時には、カテリナの方があらゆる面で勝っていた。

 だが彼は飄々とした性格の裏で、経験をどんどん吸収して強くなっていった。

 まるで強くなること自体に目的があるかのようにカテリナには思えた。

 もし今、彼と本気でぶつかり合ったら……勝てるかどうかはわからない。

 しかし、勝負とはそういうものだと納得できる程度には、カテリナは大人だった。

 と、その件のグランが歩いてくるのが見え、カテリナは気を取り直して気さくに手を振る。



「よぅグラン。……ってぇ、お前、酒取りに行ってくれたんじゃなかったのか?」

「え? あ、ああ、それは……」



 グランは手ぶらだった。

 心なしか落ち込んでいるようにも見え、普段の芝居がかった仕草もなりを潜めている。

 何があったのだろうとカテリナが思うと同時に、グランは口を開いていた。



「隊長殿、頼みがあります。今回の任、私は外させてください」

「……んだと?」



 カテリナの顔から笑みが完全に消える。



「本気で言ってやがんのか?」

「もちろんです」

「理由は?」

「言えません。ただ、私事です」

「……許さんと言ったらどうする?」

「あなたを倒してでも」



 グランのその言葉に、少し離れたところで飲んでいたオーランドとユリウスが立ち上がった。

 それを手で制し、カテリナはしばらくグランと睨み合い、不意に苦笑する。



「なんか知らねぇが、お前にとって大切な何かがあるってことだけはわかった。

わかった。どこへなりと行きやがれ。その代わりお前はオレのパーティから外すぜ」

「覚悟の上です。短い間でしたが、お世話になりました」



 グランは一礼すると、静かに踵を返してその場を去って行った。



「カテリナ……いいのか?」



 と、オーランド。



「仕方ねぇよ。今回の任務どころか、オレ達と敵対することも厭わないくらいの何かがあるってんなら……

許してやらねぇわけにゃいかねえ。それによ、オレはああいうガキは割と好きなんだ。

お前ならわかってくれんだろ、オーランド?」

「……無論だ。何年の付き合いになると思っている」



 カテリナとオーランドは薄く笑みを交わす。



「でもグランが抜けたのは戦力的に痛いっスねー」

「なんだユリウス。お前はグランのことを好きじゃなかっただろう?」

「実力を認めるか認めないかは別っス。もちろん、奴の前でそれを認めるのは絶対にお断りっスけど」

「まあ、安心しろユリウス」



 カテリナはイリスの肩に手を回し、続いて空いている方の手でククルーの頭を鷲掴みにする。



「確かにグランが抜けたのは痛えが……こいつらがその穴を十二分に埋めてくれるさ」

「こ、この子らがっスか?」

「実力はオレが保証するぜ。二人とも、多分お前らと同じかそれ以上の実力者さ」

「う、うぐぐ、姉御がそう言うなら間違いないんスけど……こんなに小さいのに……」

「……小さい小さい言わないでください」



 ククルーが自分の胸の辺りに視線を落として、ぽつりと呟いた。

 一瞬の沈黙の後、呟きを聞いた全員が爆笑した。

 同時に、新たなパーティが誕生した瞬間だった。